密を避ける2020年甲子園高校野球交流試合、割を食ったのは…

引用元:VICTORY
密を避ける2020年甲子園高校野球交流試合、割を食ったのは…

 「2020年甲子園高校野球交流試合」が10日、開幕した。新型コロナウイルスの影響で中止になった、今春の選抜出場が決まっていた32校を聖地に招く初めての試み。勝っても負けても1試合限りの高校ラストマッチは、中止になった原因である感染症のクラスター対策が徹底的に施されている。無観客となった大会は、プレーする選手だけでなく、メディアも新たな取材様式を強いられ、様々なところで影響が出ている。

■甲子園名物「アルプス取材」は禁止

 例年ならば、阪神電車の甲子園駅西口改札から出て、大型スーパーを右手に眺めながら歩くと数分で到着する入り口が変更になった。ホームベース後方に位置する関係者入り口、6号門が、三塁側に近い8号門になった。受付で所属と名前を書き、サーモグラフィーですべての通行人の体温をチェック。少しでも体温が高そうな反応が出た人は、関係者による検温が命じられる。37・5度以上であれば、入場できない。そこから普段なら使えるエレベーターではなく階段で球場の4F部分にある記者席まで上がっていく。記者席は主なスポーツ紙の場合は4席。一定の距離を空けているので、担当者以外は記者席横のメディア関係者エリアで間隔を取って観戦する。テレビに映る出場校の保護者同様、銀傘の下の上部が指定されており、直射日光にさらされることはない。プロ野球のスカウトはその前方だが、こちらも、日差しが届かない銀傘の下に区分けされている。

 甲子園名物の取材方法も禁じられた。活躍した選手の深いエピソードを引きだそうと、スタンドで応援する保護者に話を聞く、いわゆる「アルプス取材」。記者稼業のイロハが詰まった駆け出し記者の登竜門のようなもので、灼熱の太陽の下で必死に話を聞いたものだが、これも御法度となった。キラ星輝くドラフト候補選手が躍動したときも、スタンドを駆け回って各球団のスカウトからコメントを集めるのだが、これも禁じられている。大会本部からは「保護者、スカウトの取材は電話で」と決められている。スカウト陣とは普段の取材で付き合いがあるから、事情を理解して協力してくれているが、個人情報保護の時代、保護者の携帯番号を事前に調べ上げるのは困難。今大会、この手の原稿を各紙で見かけることはほとんどない。

 各校1試合限りの熱戦が終わると取材に入る。監督と指名選手は例年通りの中継局のインタビューゾーンに案内されるが、それ以外の選手はいったん、一塁側ベンチ横の階段を降りた後、すぐ右側に出てくる階段でスタンドに上がり、内野席の内側にある、普段、弁当、焼き鳥、ビールなどの飲食物が販売されている通路に誘導される。

 例年使用されていた1F通路は冷風機こそあるものの、換気が悪く、取材対象と取材陣が狭いエリアに集まり、熱気に包まれる3密の見本市のような空間だった。大会本部は、無観客であることから、普段は観客がいる球場内通路を取材場所に指定した。この取材ゾーンの入り口は、選手と報道陣が重なり、密ができないように、別々に分けられている。壁に背番号1から20まで貼り出されており、その前で取材が始まる。取材側はもちろん、試合を終えたばかりの監督、選手も全員マスク着用。対面ではあるが、仕切りを使って、飛沫が届かない距離を保つ仕組みがなされている。

 取材ゾーンは、通常開催であれば、お客さんが入っているエリアなので冷房が結構効いている。空気の通り道でもあるので「今までの1F通路のようにそこまで暑くない」という評判だった。大観衆の熱気がないためか、浜風が今年は強めなのか、記者席にいても、風が通り抜けて、涼を感じる一瞬もあるという。選手の一プレー、一プレーの熱量は不変だが、最近は夏フェス化していた甲子園は、明らかに様子を変えていた。次ページは:■最も割を食ったのはあの企業かもしれない

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